最果ての地で晩ごはんが食べたい│MRTでシンガポール最西端のTuas Linkへ
シンガポールで暮らしていると、便利な場所だけで生活が完結してしまう。ラッフルズ・プレイスで仕事を終え、いつものように帰る代わりに、ある日ふと思った。
最果ての地で晩ごはんが食べたい。
向かう先は、MRT東西線のいちばん西にあるTuas Link(トゥアス・リンク)。ラッフルズ・プレイスから、ただ電車に乗って西へ行けるところまで行き、そこで晩ごはんを食べて帰る小さな冒険である。

人が減っていく電車で、西へ
最初の車内は満員だった。CBDから西へ向かう人、乗り換える人、仕事帰りの人。見慣れたシンガポールの平日夜の光景だ。

けれど、西へ進むほどに景色も車内も少しずつ変わる。PioneerはNTUの最寄り駅のひとつで、ここで学生らしき乗客がまとまって降りた。賑わいがすっと引き、車内に空席が増える。このあたりから、目的地までの距離を体感し始める。

Joo Koonまでは住宅や商業施設の気配がある。駅前にはFairPriceやDecathlonも見え、「ここまではまだ日常の延長」と思える。

しかし、Joo Koonでいったん電車を降り、さらに西へ行く列車に乗り換える。そこからの一駅が、普通の一駅の三倍くらいに感じた。窓の外は工業地帯になり、街の密度がほどけていく。

ラッフルズ・プレイスを出て、ちょうど一時間ほど。ついに終点、Tuas Linkに着いた。

駅から5分、ラッフルズ・マリーナへ
駅からラッフルズ・マリーナまでは徒歩で約5分。人通りの少ない歩道を歩く。工業地帯の夜は、シンガポールらしくないほど静かだ。

門をくぐるとホテルのロビーが現れる。立派なのに暗く、人の気配がほとんどない。営業しているのか一瞬不安になるが、別棟のレストランへ進むと、ちゃんと明かりがついていた。


テラスの先は、すぐ海だった。対岸に見えるのはマレーシア。夜の海風と、港に並ぶヨットのマスト。ラッフルズ・プレイスの高層ビル群から一時間で来たとは、少し信じがたい。


最果てで食べた、アーリオ・オーリオ
本当はナシゴレンを食べるつもりだった。ところが、この日はないとのこと。メニューの中でいちばん手頃だったアーリオ・オーリオを頼んだ。
これが、びっくりするほどおいしい。ガーリックとチーズがしっかり効いていて、ひと口目から旨みが強い。きのこもたっぷりで、見た目以上に食べ応えがある。海辺の雰囲気に助けられた部分を差し引いても、普通に当たりだった。


都市の端まで行く、ということ
シンガポールは小さい。そう言われることが多いし、実際に日々の移動は短い。でも、地図の端まで電車で行ってみると、同じ国の中にちゃんと「遠さ」がある。
満員の車内から始まり、学生街を抜け、最後のショッピング・プレイスを過ぎ、工業地帯の終点へ。そして、海のそばで食べる一皿のパスタ。遠くへ行くために飛行機も有給もいらない。平日の夜に、MRTで一時間。それだけで、いつもの街が少し違って見える。

次に「どこかへ行きたい」と思ったら、地図の端を目指してみようと思う。最果ての地で食べる晩ごはんは、案外ちゃんとおいしい。
今回の行き先
Tuas Link MRT駅(Tuas Link MRT Station)から徒歩約5分/ラッフルズ・マリーナ(Raffles Marina)

