山渝宗天台重庆市井火锅(Tiantai Hotpot)——エレベーターは5階まで。アウトラムパーク近くの隠れ家火鍋
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。店舗情報・営業時間・価格は変更される場合があります。
エレベーターは5階までしか行きません。そこから階段で6階へ上がると、コンクリートむき出しの吹き抜けが広がっていて、そこにぽつんと一軒だけ火鍋屋があります。看板もほとんど出ていません。完全に「知っている人しか来ない」場所ですが、味は本格的で、都心の立地のわりに値段も抑えめ。アウトラムパーク駅からもすぐの山渝宗天台重庆市井火锅(Googleマップ上の表記はTiantai Hotpot)を紹介します。
アウトラムパークからすぐ、でもたどり着くまでが冒険
場所はPeople's Park Complexの6階です。アウトラムパーク(Outram Park)駅から歩いてすぐ、チャイナタウン(Chinatown)駅からはさらに近い、完全に都心のど真ん中です。
ただ、普通に行こうとすると必ず迷います。エレベーターが5階までしか上がらないからです。
5階で降りて、階段を1フロア分のぼると、いきなり視界が開けます。建物の内側ではなく、半分屋外のような吹き抜け空間。飲食店街でも何でもなく、コンクリートの床と壁がむき出しの、はっきり言って殺風景な場所です。「本当にこの先に店があるのか」と不安になるあたりが、この店の第一の魅力かもしれません。

ただ、この殺風景さには思わぬご褒美があります。視界を遮るものがないので、景色がいいのです。屋上の駐車場の向こうに、Perennialのビル、FWD、Singtelといったオフィスビル、その奥にCBDの高層ビル群が並びます。訪れたのは8月上旬、シンガポールのナショナルデー前だったので、通りには国旗がずらりと並んでいました。
ビルの中の火鍋屋なのに、夕方の空を見ながら店に入る。この導入部分が、すでに体験として面白いです。
コンクリートの中にぽつんと一軒——店構えが本格派の証

吹き抜けを歩いていくと、木の看板を掲げた店が見えてきます。周りに他の店はありません。本当にここ一軒だけです。
店名は山渝宗天台重庆市井火锅。「天台」は中国語で屋上のことで、この立地そのものが名前に入っています。GoogleマップではTiantai Hotpotと表示されるので、検索するときはこちらのほうが早いかもしれません。
剥き出しのコンクリート壁、無造作に置かれた竹の小さな椅子、店の脇の板壁に吊るされた木札のメニュー。狙って作った「レトロ中華」というより、そのまま持ってきたような素朴さがあります。中に入ると照明はオレンジ色で、簾(すだれ)で仕切られた席が並び、外の殺風景さとは対照的に落ち着いた雰囲気です。
面白いのが、板壁に吊るされた木札のメニューです。燕喉、麻辣牛肉、虎皮鴨爪(鴨の水かき)、烤脳花(豚の脳みその焼き物)、鮮毛肚(牛の第三胃・センマイ)——並んでいるのは、日本の中華料理店ではまず見ない本格的な重慶火鍋の食材ばかりです。この時点で「あ、ちゃんとした店だ」と分かります。
スープは麻辣+きのこの二色鍋

スープは、定番の麻辣(辛いスープ)ときのこのスープを半々にした二色鍋(鴛鴦鍋)にしました。
麻辣のほうは、見てのとおり赤い油の表面に花椒がびっしり浮いています。口に入れると、まず舌がしびれて、そのあとから辛さと酸味が追いかけてくる。この「辛くて酸っぱい」感じが重慶火鍋らしいところです。
ただ、シンガポールの辛さの基準からすると、これはかなりマシなほうです。こちらのローカルの辛さ(サンバルやカレー系)に慣れている方なら、じゅうぶん食べ切れるレベルだと思います。逆に、日本から来たばかりで辛さに自信がない方は、後述するタレでかなり調整できます。
きのこのスープは、白湯に近い澄んだスープで、クコの実が浮いています。麻辣で舌がしびれたら、こちらに具材を移して口を休める。二色鍋にしておくと、この行き来ができるので、辛さの調整がしやすくなります。
タレは自分で調合——台湾人同僚に教わった配合
この店(というより中国式の火鍋全般)の楽しみのひとつが、タレを自分で調合できることです。カウンターに調味料が並んでいて、好きに配合できます。
今回は、台湾人の同僚に教えてもらった配合で作りました。これがかなり良かったので共有します。
台湾人同僚に教わった火鍋タレの配合
1酢を多めに——ベースになります。これがしっかり入ることで後味が重くなりません
2醤油も多めに——酢と合わせて土台をつくります
3オイスターソースを少々——コクと甘みを足します
4ごま油を少々——香りづけ。入れすぎないのがコツです
ポイントは、酢と醤油を軸にして、油分は控えめにすることです。
火鍋のスープはどうしても油が多いので、具材をそのまま食べ続けると、途中でかなり重くなります。そこで、この酸味の効いたタレに具材をくぐらせると、タレが油を洗い落としてくれるのです。味がさっぱりするだけでなく、実際に口に入る油の量も減るので、食べたあとの胃もたれがまるで違います。
火鍋というと「ごま油+ニンニクのタレをたっぷり」というイメージがありますが、健康面を気にするなら、この酢・醤油ベースは覚えておいて損がない配合だと思います。
具材——一皿ずつが安くて、種類が多い

今回は大人数で行ったので、具材を遠慮なく頼んでテーブルいっぱいに並べました。一皿ずつの単価が安いので、いろいろ頼んで並べるのが楽しいです。今回並んだのは、こんな顔ぶれでした。
| 種類 | 具材 |
|---|---|
| 肉 | 牛肉のスライス(肥牛)。二皿頼みました。しゃぶしゃぶのように、麻辣にさっとくぐらせるのがおすすめです |
| 練り物・すり身 | エビのすり身(蝦滑)、フィッシュボール、揚げ物。エビのすり身はスプーンでスープに落として固めるタイプで、ぷりぷりに仕上がります |
| 豆製品 | 豆腐、湯葉(腐竹)。湯葉はスープをよく吸うので、麻辣側に入れると当たりです |
| 野菜 | 白菜、レタス(生菜)、きくらげ、大根。レタスは火鍋に入れるイメージがないかもしれませんが、さっと湯がくと甘みが出ます |
| 薬味・タレ | 刻みネギと唐辛子入りの薬味、唐辛子粉とゴマの乾いたタレ皿 |
個人的に面白かったのは、湯がく順番で味が変わっていくことです。最初のうちはスープが澄んでいるのであっさり食べられますが、肉や練り物を通していくうちに出汁が濃くなり、後半の野菜がぐっとおいしくなります。締めに向けてスープが完成していく感覚があります。
値段——都心の立地を考えるとかなり安い
Googleマップに出ている価格帯は2人でS$100ほど。1人あたりS$50前後という計算になります。
この数字は、立地を考えるとかなり健闘していると思います。ここはアウトラムパーク・チャイナタウンという都心のど真ん中で、しかも二色鍋にして具材をテーブルいっぱいに並べた場合の金額です。同じ都心で大手チェーンの火鍋に行けば、1人あたりもう一段上の予算を見ておく必要があります。
しかも火鍋は、人数が増えるほど鍋とスープの代金が分散します。今回のように大人数で行けば、コスパはさらに上がる計算です。
「隠れ家」というと値段が高い店を連想しがちですが、この店は逆です。アクセスの悪さが、そのまま価格に還元されているような印象を受けました。
まとめ——冒険と本格派を両方楽しめる店
この店の良さを整理すると、次のとおりです。
第一に、たどり着くまでが体験になっていること。エレベーター5階+階段で6階、殺風景な吹き抜けを歩いて一軒だけの店にたどり着く。この道中がすでに面白く、初めて連れて行く人には確実にウケます。
第二に、味が本格的なこと。花椒の効いた麻辣スープ、木札に並ぶ本場の食材。観光客向けに寄せていない、重慶火鍋そのものです。
第三に、都心のわりに値段が抑えめなこと。アウトラムパーク・チャイナタウンからすぐという立地で、この内容ならじゅうぶんリーズナブルだと思います。人数が集まるほどコスパが上がるので、大人数の集まりにも向いています。
シンガポールの火鍋というと、モールに入っている大型チェーンを思い浮かべる方が多いと思います。ただ、こういう「知らないとたどり着けない」店に行くのも、住んでいるからこその楽しみです。チャイナタウン・アウトラムパーク方面に行く機会があれば、ぜひ探してみてください。繰り返しますが、エレベーターは5階までです。
基本情報
| 店名 | 山渝宗天台重庆市井火锅 (Googleマップ上の表記:Tiantai Hotpot) |
|---|---|
| 住所 | 1 Park Road, #06-01/02, People's Park Complex, Singapore 059108 |
| アクセス | MRT Outram Park駅・Chinatown駅から徒歩圏。エレベーターで5階まで上がり、階段で6階へ |
| 営業時間 | 11:30〜24:00(変更の可能性あり) |
| 予算感 | 2人でS$100ほど(Googleマップ掲載の価格帯。注文内容により変動します) |
地図が表示されない場合はGoogleマップで開く(Tiantai Hotpot / People's Park Complex)。

