第7回|Moral Character Determination(人格審査)を通るまで│指紋・リファレンス5人・元上司への照会と、判定まで約3か月半の記録
シリーズ:カリフォルニア州司法試験、二度目で合格した話
- 第1回|カリフォルニア州司法試験とは何か、そしてなぜ挑んだのか
- 第2回|1回目の不合格を振り返る
- 第3回|リベンジ勉強法、3か月強でどう準備したか
- 第4回|渡航・現地準備のリアル
- 第5回|試験2日間の当日記録、そして合格へ
- 第6回|番外編・現地で何を食べたか
- 第7回|Moral Character Determination(人格審査)を通るまで(この記事)
カリフォルニア州司法試験(California Bar Examination)に合格したら、それで弁護士になれるわけではありません。合格発表のあとに待っているのが、この記事のテーマである人格審査(Moral Character Determination)です。
正直なところ、試験そのものより神経を使いました。理由ははっきりしていて、自分ひとりの努力では終わらない手続だからです。指紋を採ってくれる警察、推薦人になってくれる知人、照会に答えてくれる元上司、資格の履歴を証明してくれる団体。全部、他人の時間をもらわないと前に進みません。
申請してからポジティブな判定(positive moral character determination)が出るまで、約3か月半かかりました。何にどれだけ手間がかかったのかを、実際のやり取りに沿って残しておきます。
Moral Character Determinationとは何か
州弁護士会の試験委員会(Committee of Bar Examiners)が、申請者に弁護士としての適格性があるかを調べる手続です。試験に受かっていても、この判定が出なければ登録(admission)には進めません。申請は試験の前でも後でも可能で、私は合格後に出しました。
照会状に書かれていた「善良な人格(good moral character)」の定義がわかりやすいので引いておくと、正直さ、公正さ、率直さ、信頼性、受託者としての責任の遵守、法令の尊重、他者の権利と司法手続への敬意、といった資質のことだとされています。犯歴の有無だけを見る手続ではない、ということです。
申請書では、学歴・職歴・住所歴をもれなく並べたうえで、学生ローンの延滞、未払債務、民事訴訟や行政手続の当事者になった経験、刑事事件、破産、法廷侮辱など、かなり細かい質問に「はい・いいえ」で答えます。
住所歴と職歴は、開始と終了を日単位で入れる欄になっています。何年も前の引っ越しの日付まで正確には思い出せなかったので問い合わせたところ、日の部分はおおよそで構わない、という趣旨の回答でした。ここで完璧を目指して手が止まるくらいなら、分かる範囲で埋めて先に進んだ方がよさそうです。
判定には有効期間があり、判定日から3年間です。この期間内に登録要件をすべて満たせなければ、延長申請(Application for Extension)と手数料が必要になります(州弁護士会規則(Rules of the State Bar)4.51・4.52)。制度の概要は州弁護士会の公式ページにまとまっています。
申請から判定までの流れ
申請はオンラインで行い、手数料の支払いと宣誓書への電子署名まで、その場で済ませます。指紋カードや証明書の原本は、別途ロサンゼルスの州弁護士会あてに郵送します。それがすべて届いて申請が「完成(complete)」扱いになってから、審査が進みます。判定が出たら、登録の手続へ進みます。私は5月に申請して、9月にポジティブな判定をもらいました。
手間がかかるのは「他人に頼む」ところ
リファレンス5人(親族以外)
親族以外で、自分のことを知っている人を5人挙げる必要があります。私は元同僚や仕事で関わった方にお願いしました。
実際に照会が行ったかどうかは、申請者側からは見えません。感触としては、5人全員に連絡が行ったわけではなさそうでした。
元上司への照会に手間がかかった
職歴に書いた勤務先については、雇用照会(Employment Verification)が飛びます。ここが本当に大変でした。私は転職の回数が多いので、対象になる勤務先が単純に多いのです。
資格ごとに、確認先の連絡先まで書く
弁護士と公認会計士の両方の資格について、登録の有無や懲戒歴を確認するための団体の連絡先を書く欄がありました。自分の記憶で書ける情報ではないので、それぞれに問い合わせるところから始まります。
指紋(Fingerprint)はシンガポールで採ってもらった
指紋の提出は必須です。カリフォルニア州内にいるならライブスキャン(Live Scan)で済みますが、州外や国外にいる場合は、FBIの指紋カード(Form FD-258)2枚を郵送することになります。アップロードは不可で、ロサンゼルスの入学審査部(Office of Admissions)あてに書留で送れ、という指定でした。
日本で採ろうとすると、法医学の機関で5万円ほどかかる、というブログを見かけました。私は当時シンガポールにいたので、現地で採ることにしました。民間のフィンガープリント業者にも問い合わせましたが、「この手続は州弁護士会の指示に厳密に従う必要がある」という回答で、結局は自力で動くことになります。
結論としては、拍子抜けするほど簡単でした。
- FD-258の用紙をオンラインで2枚購入(ショッピー(Shopee)で20シンガポールドルほどでした)
- その用紙を持って警察署へ。予約もなく飛び込みで行って、その場で採ってもらえました
- 採ってもらった2枚を、シンガポールから書留で郵送
行ったのは、チャイナタウンの南側にあるポリス・カントンメント・コンプレックス(Police Cantonment Complex、391 New Bridge Road)です。指紋の採取はこの建物の中の窓口で扱っていて、用紙さえ持っていけば話が早いです。
途中で「指紋がまだ届いていない」というリマインドが届きましたが、その1週間後には受領確認が来て、カリフォルニア州司法省(Department of Justice)へ回付されたという連絡が入りました。ここは、費用と手間の両面でいちばんあっけなく片づいた部分です。
運転記録証明書は、交番で用紙をもらって英文で頼んだ
意外と見落とされるのが運転記録(driving record)です。過去10年以内(または18歳以降の、いずれか短い期間)にカリフォルニア州外や外国の運転免許を持っていた人は、運転記録の提出を求められます。条件はここでも細かく、①認証された原本であること、②申請時から6か月以内に発行されたものであること、③5年分(またはその法域で出せる最長の期間)の記録を含むこと、の3点です。
日本の運転免許を持っている以上、私も対象でした。日本でこれに当たるのが運転記録証明書です。申込用紙は自動車安全運転センターのほか、警察署・交番・駐在所にも備え付けられています。私は交番でもらってきて記入し、郵便局の窓口で手数料を払って申し込みました。証明の対象期間は1年・3年・5年から選べるので、要件に合わせて5年分にしています。
英文で発行してほしい場合は、申込用紙の通信欄(備考欄)に「英文希望」と書くよう案内されているので、そのとおりにしました。
振り返ってみると、この手続は難易度というより段取りの勝負でした。自分で書ける欄はいつでも埋められますが、リファレンス、元上司、資格団体、証明書の発行は、すべて相手の時間で動きます。一方で、指紋のように難しそうに見えて予約なしで当日その場で終わるものもあります。試験の勉強とはまったく別の種類の消耗でした。
※本記事は2026年9月時点の情報と、筆者自身の手続の記録に基づいています。要件・期間・手数料は変更されることがありますので、最新の情報は必ずカリフォルニア州弁護士会(The State Bar of California)の公式サイト等でご確認ください。

